第7章 勘違い
「泣いてる理由はなんだ」
「・・・・・・泣いてません・・・」
「見え透いた嘘をつくんじゃねえ。これが泣いていないと言うならなんになるんだ。どうしてそんな顔してる。その理由がてめえの本心そのものだろ」
「・・・・・・」
言い返せる言葉が出てこない。
見合い写真なんて単純な物でも、見せつけられたのは決定打に他ならなかった。
何も知らない、何も気にしないふりをして、この人の腕に抱かれてしまえばきっと楽だ。
恋人ごっこなんてする気はなくて、ただ傍に、少しでも長く隣に居られればそれで良かったのに。
「メイリー」
行き場のない憤りは本人にぶつけるより他になかった。
目元をゆっくりと指で辿る先生を睨み上げ、拳を作って握りしめたシーツにギリギリと怒りを込める。
「なんであなたは・・・・・・」
「・・・・・・聞け」
「・・・、イヤです」
「いいから聞け」
わざわざ突き落とされなくたって自分で引く事くらいできる。
無暗に傷付く道なんて誰も選びたくはない。
それでもこの人は無残にも私を見下ろして、少し怒ったかのような目で静かに声をかけてくる。