第7章 勘違い
「めんどくせえ事になったもんだ。これだからガキは嫌だ」
ベッドの上でふらふらと起き上がり、先生から苛立った言葉を浴びせられて歯を食いしばる私の目の前。
差し出されたのは一冊の冊子のような物。
「おら」
「・・・・・・」
「見てみろ」
「・・・なんで」
「見るんだ」
「・・・・・・はい」
見なくても分かる。
雅に誂えた装丁は明らかに見合い写真だ。
今にも震えそうな指先で開いてみればやはりその通り、栗色の髪をした可愛らしい女性が慎ましやかに映っている。
なんになる。
こんな物を、私に見せて。
私にどうしろと。
「・・・・・・綺麗な人ですね」
単に思っただけの感想を口にした。
実際写真に写っている女性は可愛らしい人で、なんとなく、どこかで見た事があるような気がするけれどそれはきっと私の勘違いだろう。
少しだけ気になるのは、見合い写真であるはずのこれに写る女性がどうにも浮かない顔をしているように見える事。
作られた雰囲気の笑顔はなんだか無理があった。
切なげな表情であってさえこの人は申し分ないくらい可愛いのに。
緊張でもしているのか、もっと楽しそうに笑ったらいい。
この人には明るい笑顔が似合いそうだ。