第2章 突然のキス
ぶつぶつと呟いている先生はなんだか楽しそうだ。
しかし私はその直後、自分の身に降りかかった現実にピシッと固まった。
「・・・・・・」
後頭部と頬に当てられた手の感触と、じわじわと蝕まれていくようなこの暑さ。
唇に触れた柔らかい質感と、全てのやる気を削ぎ落とされてしまいそうな初夏の暑さ。
この中に明らかにおかしいもにがある。
「・・・・・・」
キスされた。
先生に。
唇を重ねられ、私は目を見開いたまま硬直。
状況判断に苦しみ、何かしらの反応を示すでもなくじっとしていたが、私に触れた手はそのままにして先生の顔が離れていくのには気づいた。
私は先生の顔を視界に捉え、一度だけ瞬きをした。
「・・・・・・は?」
「いや、はって。それだけかよ」
先生は鼻で笑う。
私は私で先生を茫然と眺め、突然の出来事の余り放心状態に近かった。
手元に投げ出された自分のノートを意識の外で持ち上げ、先生の手から逃れて暑いという感覚にだけ取り敢えず従う。
パタパタとノートで扇いでいると先生も再びコンクリートの壁に背を預けた。