第2章 突然のキス
「何もう先生、放してください。触られると私が暑い」
鬱陶しく手で退けると、先生は面白そうに目元を和ませ私の頭に手を乗せた。
もう片方の手では吸っていた煙草を消し、その吸い殻を携帯灰皿に葬り去っている。
体ごと私に向かい、両手でこの頭を遊び道具にするこの人。
無表情なはずなのに、年甲斐もなくどこかはしゃいだ顔つきをする先生を目にした私は呆れて溜息をついた。
すると前髪をかき上げてきた所で、先生は突如思いっきり噴き出した。
「デコ出したガキがっ」
意味が分からない。
「・・・何がしたいんですか。出させてんの先生ですから。暑さで頭イカレました?」
「ああ、かもな。そういや前々から思ってたけど、お前の頭って犬っぽいな」
「・・・それはなんですか。貶してる?脳の容量狭いって言いたいんですか?」
「いや、撫で心地がいいって言いたい」
軽く笑いながら私の髪をかき上げていた先生の手は、そのまま後頭部まで伸びていって撫で付けられた。
濡れた髪を指が掬い、片方だけ離れて行って今度は頬に当てられる。
冷たくはないが、頬よりは体温の低い指先。
「・・・・・・先生・・・?」
顔つきはいつも通りだけど、少しだけ雰囲気が変わった。
私には先生がそう見えた。
「ほんとにイカレてんのかもな・・・」
「え?」
「多分、今さらなんだろうが」
「は?」