第7章 勘違い
「・・・・・・退いてくださいよ・・・」
焦燥は苛立ちへと色を変え、気づけば思いの外低い声が出ていた。
けれどそこに迫力なんてない。
弱々しくて、震えないようにするだけで精一杯。
くだらない話をして、バカなことを言い合って、私にとって手放しがたいのはその時々の居心地の良さだけだ。
ちゃらんぽらんとした関係の中、好きだなんて事もなければ言われた事もない。
それがなんで今によって、よりにもよって今この時に。
これから誰かのものになるこの人が。
冗談にしてはキツすぎる。
「ごっこ遊びにだって限度ってもんがあります。私にだってそれくらい分かる」
「・・・メイリー待て。少し俺の話を聞け」
「・・・・・・上手くいくといいですね。見合い」
目が熱いのは気のせいではない。
トリガーを引いた先生の言葉によって押さえ込んでいたものがせり上がってくる。
堪えきれずにジワリと視界が滲んだ直後、咄嗟に顔を横に向けると一瞬だけ先生が息を止めたのが分かった。