第7章 勘違い
ゆっくりと一度だけ瞬きをした先生。
その目はいつもより厳しく私を見据え、けれどなんとなく切な気な表情は見ていて少し苦しかった。
嘘ばっかりだ。
ガキだと思って馬鹿にして。
大人は嘘つきなんだと、だいたいの子供は知っている。
この人にとって私はもうすぐ要らないものになる。
それを私は知っている。
なのにどうして、そんな顔でそんな事を私に言わせようとするのか。
「言え」
「・・・なんで・・・・・・」
「俺を傷つけた。その償いだとでも思えばいい」
真っ直ぐな瞳に耐え切れず、目線を外して先生に触れていたこの手もシーツの上へと下ろした。
それが不服らしいこの人はすかさず私を追って来るけど、頬に手を添えられても今度は決して目を合わせないように気を配る。
頑なにその手を逆らい、シーツに張り付く事数秒後。
気の長い方ではない先生からは不機嫌な雰囲気が漂っている。
しかし強行手段に出る様子はなくて、その代わりに静かな深い声が再び私を呼んだ。
「メイリー」
いつもの声で呼ばれる事が辛い。
恐る恐る先生を見上げれば穏やかな目は一瞬で私を捕えている。