第7章 勘違い
ほんの少し前の出来事だ。
同じ様な出来事は私が高校を卒業する時まで、過ぎ去っていく日々の中でささやかに続くと思っていた。
繰り返し屋上に集合して、お互いやる気なく空を見上げて、なんの意味もない事を口に出し合って。
それで良かった。
それくらいでいい。
なのに今この人の目は、痛いくらい真っ直ぐに私を見ている。
「なあ」
「・・・・・・はい・・・?」
目元から滑り落ちた唇は頬を掠める。
耳元でそっと囁かれ、落ち着いた低い声に少し遅れて返した。
先生がじっと私を見下ろす。
見慣れたブルーグレーは静かに深い。
「割と前から考えていた事がある」
「・・・・・・なんです・・・?」
「これからの事だ」
これからの事。
この先の、未来の事。
それは一体、誰と、誰の。
どうしてこの人はそれを私に言うのか。
焦りと言うか、身の竦むような感覚が、ヒリヒリじわじわと私の中で芽生えていく。