第7章 勘違い
なんだかもう、どうしていつもこうなってしまうのだろう。
意地を張るのも馬鹿らしい。
こんな人のために。
こんな人なのに。
グリグリと肩に頭を押し付けて子供染みた態度を取るアホな大人だ。
こんな人を目の前にすると私はいつだってこうなる。
さっきまで私の中に確かにあったはずの怒りやら嫌悪感やらは、めんどくさいと言わんばかりに全てを投げ打ち、どこか遠くへ飛び立とうとしていた。
「・・・ダメな人・・・・・・」
「うるせえ。大人なんてな、お前らガキ共が思ってるほど大層なもんじゃねえんだよ」
「拗ねながら偉そうに言う事じゃありませんからね」
諫めつつ、しかし私のこの手はゆっくりと先生の頭に伸びて柔らかく撫でた。
指先に髪をくぐらせ、プライドなんてクソくらえな態度を貫く大人を懐かせる。
不貞腐れながらもしっかり抱きついてくるこの人を無導に突き放す事はできなくて、決して可愛いものではないのにくすぐったい感覚がじわじわと沸き起こってきた。
腹は立つし呆れも通り越してしまう程の体たらくなのに、縋りついてくる事を嬉しくないとは言い切れない。
鬱陶しいはずのこの重みも、離れずそこに在る体温も。
たぶん、大切なんだろう。
私が身体を明け渡してこの人が満足するなら、それくらい叶えてやろう。
そう思えてしまう。