第6章 見合い?
「なあ、メイリーよ。いい加減はっきりさせようじゃねえか。お前がそんな顔してんのも、俺の見合い話聞いてヘソ曲げてんのも、理由は全部一緒だろ」
「なに、を・・・・・・」
バカな事言ってんですかと。
そんな顔ってどんな顔ですかと。
冷めた目を向けてやりたいのに。
「俺は割と冗談も言うが、遊び半分の冗談で生徒に手を出そうとは思わねえ」
「・・・・・・」
「お前は違うのか。冗談で教師に抱かれるシュミなんてないだろ」
髪を梳く、その手つき。
見下ろしてくる目も投げてくる言葉もぶっきらぼうなものでしかないのに、この人の手はいつだって優しく私を迎え入れてくれる。
ほだされる。
居心地のいい場所と、安全でしかない先生の腕の中。
それを私に与える代わりに、この人は私の回りに存在する全ての壁を解放させていた。
この人の傍にいれば私は自由でいられるけど、壁が壊れてしまったせいで悪い大人を防ぐ手立てはすでにない。
私の上から退いて、パンパンと自分のズボンを払う先生を呆然と眺め上げた。
いつまでも呆けている私を見下ろした先生は微かに笑い、その勝ち誇ったかのような表情には若干イラッと来るが惚れ惚れする美形には負ける。
悔しいけど。
手を差し出されて素直に従った。
上げた腕を掴んで引き起こされ、小さな子供にするように私の服に付いた埃も先生の手がパンパンと落としていく。