第6章 見合い?
「先生、いくらなんでもガッツキすぎです」
「狩猟本能だ許せ」
「・・・・・・狩猟?・・・ってなんですかソレ私喰われるんですか、捕食ですかっ?」
さすがに焦ったその一言。
私は先生に狩られるのか。
肉食獣の目をした先生にジリッと詰め寄られ、些か涙目になりながら戦々恐々と目の前のケダモノを見上げた。
私の体重で力任せにこの人を退かせることはまず不可能。
心理戦も先生には通じないしむしろこちらの方が先に失神喪失させられる。
絶望的な圧倒的不利。
理不尽なまでに敵わない。
徐々に徐々にと甚振るように近づいてくるから懸命に横を向いて限界まで顔を背けた。
唇が触れそう。
学校なのに。
ふきっ晒しの屋上なのに。
「・・・・・・ダメ・・・です・・・」
緊張感のせいか声が掠れた。
私ににじり寄って来ていた先生の動きは不意に止まる。
先生とこうなる前、ふざけたこの人にここでキスされた事はある。
でもあの時はまだ、私はその先を知らなかった。
何にも知らず、先生に対して特別何かを思う訳でもないから気にせずこの屋上へと通えた。
けれど教えられてしまった今、キスだけで止めるなんて。
キスより先に待ち構えている、疼く感情をひた隠しにしておくなんて。