第6章 見合い?
「・・・・・・なんでしょうか・・・」
「俺はお前以外の誰かで満たされた所で嬉しくもなんともねえ」
「・・・・・・はい?」
不必要な名前連呼の後、やけに真面目な声がしたかと思っていたらその内容を理解するのに数秒要することになった。
思わず間抜けに聞き返し、硬直したまま対面するドアをパチパチと瞬きを繰り返しつつ凝視する。
すると背後の先生が微かに動いた。
凶器にしかならない右足を穏やかに地面へと下ろし、それに気づいてホッとしたのも束の間ボスッと。
背中側に先生の重みが加わり、身体の前にするりと回された両腕は私を捕えた。
「と言うよりも、お前じゃなけりゃ俺のことは満たせない」
「・・・は・・・・・・?」
「お前しか欲しくねえ」
「なに、言って・・・・・・」
肩に先生の顔が埋まる。
グリグリと甘えたに頭を擦り付け、その両腕はぎゅうぎゅうと私の体を抱き潰す。
猫みたいな引っ付き虫みたいな仕草のそれ。
可愛いと思えないでけれど、しかしなんと言うかこう。
筋肉ガチガチのおっさんに背後から拘束される感想は、どうしたって第一にはこうなる。