第6章 見合い?
「・・・・・・先生が自分で決める事です」
「ああ。そうだな」
「・・・どうするんですか」
「気になるか?」
また、そうやって。
上からクスッと、笑った声が降ってきたような気がした。
頭を上げるのは癪だから目を逸らしたまま、色んなものから逃れたくて先生の胸に手を付いた。
拒否ではない。
ただ自分を守るために。
凭れていて先生の体から離れても、今度はその手が追いかけてくる事はなかった。
おかしくなりそう。
先生こそ今日は少し変だ。
子供っぽくやさぐれていたかと思えば、今はこうして言葉を弄び私をその眼に捕えている。
獲物を狙う肉食獣みたいに。
元の位置に座り直すことなく、なぜなのか今にも震え出しそうな膝を叱咤してその場に立ち上がった。
先生が私を見上げる。
だから私は、先生の目から逃げた。
「・・・・・・戻りますね。次、体育なんで・・・着替えなきゃ」
周りの女子とは違って、着替えなんて三分もあれば余裕でできる。
いつもそうしてきた。
いつも昼休みの終わるぎりぎりまでここに居座って、私は先生の隣を占領してきた。
自分でも呆れてしまう程の分かり易い言い訳を口に出し、先生の前を通り過ぎてドアへと向かった。
背中にヒシヒシと感じる視線は気づかないふりをしながら、ただ一心に、ドアへと。