第6章 見合い?
「見合い」
「・・・・・・はい?」
「やめてほしいか」
「・・・・・・どうして・・・?」
一瞬だけ自分の顔が強張ったのが分かった。
極力それを抑えて、平静を装い聞き返す。
頬を撫でる、誘い込むかのようなその手つき。
無言で何かを訴えかけてくる目から逃れるためにいくらか俯いた。
「・・・・・・それは・・・私が口を挟む事じゃありません」
「そうか。物分かりが良すぎるガキってのも考えものだな」
どういう意味かと、問おうとして思い留まった。
意味なんて分かり切っている。
先生は本当にずるい人だ。
言わなくていい事はいつもズケズケはっきりと口に出してくるくせに。
一番重要なところでは急に言葉を迂回させて私に選ばせようと仕向けてくる。
先生の目も、私を包む手も何もかも、その全てが私の前に差し出しているのは初めからたった一つの答えだけ。
そのたった一つしか、この人は私のために用意していないのに。
もとより暴かれているそれを日の下に晒せと、言外に強要される。