第6章 見合い?
「メイリー」
「はい」
「キスさせろ」
「駄目です」
頑固だな。
上から舌打ちされてふっと笑った。
すると先生もつられたのか僅かに肩を揺らし、その気配は寄りかかる私にも伝わってくる。
ゆっくりとした時間は静かに流れる。
私を抱く先生の手も、髪を撫でるその動作も、どれもこれも全ては安心材料でしかない。
分かるか分からないか程度に擦り寄れば、やはりと言うべきかしっかり気づかれてぎゅっと抱きしめられた。
「・・・・・・先生・・・」
「なんだ」
「・・・・・・いえ、」
その先は続かない。
まずいなと、そう思う。
抜け出せる自信がない。
この人の目に晒せるものはすべて晒してきたけれど、ここまで預ける気なんてなかったのに。
こんなはずじゃなかった。
だけどたった半年で、先生の存在は私の中で相当大きくなっていた。
柔らかい体温と心地良い心音に浸りながら先生に凭れていると、耳から頬にかけて大きな拳でふわりと包まれた。
ゆっくり顔を上げて先生を仰ぎ見れば、静かに鋭く、けれど穏やかな目が私に向けられている。