第2章 ルージュのささやき
歌い終えたネズがそっと瞳をあけユウリをみると
ぼろぼろと泣いてる姿に少しの驚きを感じてコワレモノを扱うようにふわっと抱き締め優しく涙を拭う。
「本当にお前は泣き虫ですね」
「誰のせいで…。」
ポケットにいれていたハンカチを取り出し鼻から下を覆い止まらない涙を受け止め少しだけ眉を潜めて反論する
(まぁ、そんなところにも惹かれてるんですけどね)
ソッドとシルディのあの一件で遠ざけようとひどい言葉を伝えた、あの時のことをなぜか頭に過り思い出していた。
あの時のユウリの顔。
今でも鮮明に浮かぶ見たことのないつらく悲しそうに笑った表情を。
酷い言葉と共にリーグカードを渡した自分自身の矛盾。
傷つきたくなく
傷つけたくなかったそう思っていた。
今思えばただ俺自身が臆病だっただけ。
彼女のその瞳の奥の色に気づかないふりをしていた。
マリィにあの言葉をもらうまでは…。
あれから少しの歳月が流れた。
「…………さん。
………………ネズさん?」
考え事から心配そうな声のほうへ視線を向けるとすぐそばで自分の名前を呼ぶユウリの不思議そうな表情が
視界にはいりはぁーとほんの少し長いため息をついた後ユウリの肩に顔を埋めた。
「考え事ですか?」
首に触れるネズの髪をくすぐったく思いながら呟くと「えぇ」と言葉が返ってきた。
すぐ近くでくすくすと控えめに笑いながらユウリはぽんぽんと軽くネズの頭を叩くように撫でた。
「お疲れ様。ネズさん…」
「……………ユウリ。俺から離れないでくださいね」