第2章 ルージュのささやき
笑みを深くして全て見透かされた言葉にむーっと恥ずかしさと少し怒った顔で見上げた。
なにを言ってもこの人には勝てないんだな、と不意打ちで実感させられる
「少し動きますよ」
ぽつりと呟いてチェアをキーボード正面に来るように向け無言で音調整をはじめた。
前にキーボード
体全体を包み込まれ身動きが取れない。
オマケにすぐ近くのネズの横顔にドキドキする。
触れる一歩手前。
視線を泳がせているユウリを横目に薄く微笑んでキーボードを叩き音を紡いでいく。
優しいメロディーに下を向いていたユウリがゆっくりと上を向くとネズがすぅと息を吸い口をひらけ歌いはじめた。
“愛している
そっと包み込んでも貴方は笑顔で
すり抜けていくのでしょう
私が行けなかったあの世界(ばしょ)へ
貴方が強いのは知っているから…
だからもう少しだけそばにいさせて。
その笑顔で私を照らして
夢ならどうか覚めないで…”
優しく悲しいメロディーとネズの低い歌声に胸からこみ上げるものがユウリにはわからなく困惑していた。
聴いたことのない曲。
切なく歌うネズをみてあぁ…。と思った。
この人の本心はこんなにも脆く崩れやすいものなのか…
そう歌声から感じとるといつの間にか一筋の涙がこぼれ次々と溢れだした。