第2章 ルージュのささやき
「…………?」
首を傾げながらもマグカップをテーブルにおいて素早くネズの元に向かうと片腕だけで抱き締められ
ユウリは硬直した。
「ね、ネズさん…??」
「落ち着く…。」
首筋にネズの吐息がかかりくすぐったく思うものの体が動かず口をぱくぱくさせているのを見て無表情だった表情が
笑みを深めてそのまま仕事部屋へ戻って行った。
いきなりの事に少し動揺しながら消えていった方を見つめていると後ろからマリィの声がして我にかえり
「はぁ…やっぱり気が持たないなぁ…」
ソファーに戻るとどかっと大袈裟に座り少しぬるくなったココアに口をつけた。
「アニキのあんな顔久しぶりに見るユウリが修行行ってからは仕事に打ち込んどったんよ。」
「そうなんだ…。
兄妹っていいなぁ…。マリィちゃん一番近くでネズさん見られるじゃん」
マリィの発言を聞いて寂しかったのは私だけじゃなかったんだ…。そう心のなかで思いながらホップといいマリィと言い兄弟っていいなぁっと口にした。
「何言いよーと?兄弟の事はわからんけどアニキに一番近いのはユウリやのに」
「へ?」
「恋人ってそういうもんじゃなかと?」
思っていないことに頭を殴られる感覚に襲われ変な声をだしてしまう。
他愛もない会話を続けていたがなにもなかったように
「休憩も必要やね。」っとマリィがボソッと時計をみて呟きネズが消えていった扉のほうへ向かいあけた。
「ユウリここから出て左奥の扉。」
行け。と訴えかけてくる瞳に拒否権などなくユウリは薄く笑い頷く。
「防音のために扉二重になっとるけん。そのまま入っていきんしゃい」
出たのを確認するとマリィは満足そうにドアを閉めた。
拒まなかったのはジムリーダーではなくシンガーソングライターのネズの姿を見たかったから。