第2章 ルージュのささやき
「いつ見てもかっこいいなぁ…」
テレビに映る最愛の人のCMに何度見てもときめき見入ってしまう。
「またやってる。ユウリも好いとーね。
まぁアニキ滅多にそげんことやらんけん、珍しか」
テレビを見ているとCM毎に高確率でネズのコスメ宣伝が流れていた。
長袖のダボっとしたカットソーにパンツのラフな黒コーデ。
体育座りに片足を伸ばし立て膝に腕を交差させてにやっと不適な笑みを浮かべ「お前のその唇で愛を歌え…!」と発した。
モノクロの世界…
宣伝のコスメを塗った唇とハイヒールパンプスだけが赤く色鮮やかに映っていた。
女性のアナウンスと共にネズの艶やかな曲が流れる…というものだった
「宣伝すごいよね…。」
キッチンでココアをいれているマリィの方を見るとそちら側の扉が開くのが見えた。
「ふはぁ」
口を手で隠しながらアクビをしているネズが入ってくる
大きめのニットを着ているせいかずれて肩がでていつも高い位置にあるポニーテールも耳辺りまでズレて寝起きなのが一目でわかった。
「おはよアニキ。また徹夜?」
「おはようございます。……もうすぐなんでね」
マリィの横に立ちネズもマグカップとコーヒー粉を一緒に取り出した。
「ユウリお待たせ」
マグを2つトレーにのせてユウリのもとに移動する。
「ありがとう。マリィ」
マグカップを受け取り笑うとマリィも少し笑みを深めてソファーに座りユウリと一緒にネズの方を見た。
「もうすぐ…?」
口からぽろりとでてユウリは首を傾げた
「曲ですよ。」
ケトルをとりお湯を注ぐとふわりと珈琲の香りが部屋にひろがる
「アニキ朝ごはんは?」
マリィの問いかけにいつの間に出したのか玄米ブランを見せた。
「はぁ。お昼はユウリと作るけん。出といで」
ため息にネズは薄い笑みを返しマグカップを持ち部屋の方に向かう
両手塞がりドアを開けられず玄米ブランを口に咥えドアノブに手をかざすが何か思い付いたように
ユウリに視線をなげてあいてる方の手で手招きした。