第85章 無色透明
赤ちゃんと実弥の様子を観察する日々が続いている。
私は基本的にノータッチだった。
「おいー!」
家の中がドタバタと騒がしくなって、何かと思えば優鈴が玄関先から叫んでいるのだとわかった。
実弥がびっくりしていたが、お昼寝中の赤ちゃんは起きることなく寝ていた。
私は渋々立ち上がって玄関に向かった。
「散歩行くぞこのヤロー!」
「行きましょー」
そんな優鈴の隣には天晴先輩。
はて、と首を傾げていると彼はにこりと笑った。
「誘ってもらったの。ご一緒しようと思ってついてきちゃった。これ、少ないけどお祝い。」
そう言って先輩は豪華な装飾の封筒を渡してくれた。
「なーんかよくわかんないけど色々入り用だと思ったからゲンナマにしたわ!」
「言い方が下品…」
「お金だけは裏切らないわよ。」
ファサア…っと綺麗な髪をはらう先輩。
…いったいこの人に何があったんだろう。
「…ありがとうございます。」
「赤ちゃんは元気?」
「……はい。」
「そ。生まれたての赤ちゃんに触るわけにもいかないから中には入らないわ。実弥くんによろしく言っておいて。」
「…」
私は頷いた。
「散歩行くからシンダガワに言ってきて。」
「私?」
「そう。お前を連れて行くからお前が言いに行って。」
ということで実弥に一言伝えて久しぶりに外に出ることに。
「散歩って言ってもお前を歩かせるわけにはいかねぇからドライブな!」
優鈴の車に乗り込み、三人でどこかへレッツゴー。
私は助手席でぼーっとして外の景色を見ていた。
「どこ行きます?」
「そりゃ海でしょ。あんなに綺麗なんだから〜!」
少し遠くまで行って砂浜に降りた。
少しだけ外の風にあたろうと言うので外に出た。私は砂の上に座り込んでぽけーと言っていたけど2人は楽しそうだった。
「砂浜の上で動けないとか軟弱ねぇ!!!!!」
「なめてんじゃねぇぞクソッタレ!!!!!」
ボールを持ってきていたみたいでノリノリでビーチバレーやってる。
いや、なんかバレーの楽しい雰囲気なんてどこにもないんだけど。ボールが目に見えないくらいビュンビュン飛んでるんだけど。