第84章 黎明
ギャアギャアと怪獣のように泣くので驚いた。
どうしようかと思って手を伸ばしたら、バシッと思いっきり叩かれた。…赤ちゃんだから痛くないけど。
「私のこと嫌いみたい。」
「そ…そんなわけないだろ。赤ちゃんだぞ?」
私はじいっと赤ちゃんの顔を見つめた。
「うん、ありがと。」
「…あ、あぁ。」
実弥は泣く赤ちゃんを抱き上げた。
「……えっと、それじゃあ今日から一緒のお部屋になりますので。」
「………わかりました」
どうやら赤ちゃんはここに置いていかれるらしい。…私動けないのに大丈夫かな。
先生と看護師さんが出ていっても赤ちゃんはまだ泣いていた。
「……ちょっと起き上がってみるか?今のじゃあんまりわかんなかっただろ。」
「ううん、このままでいい。」
「………」
私は窓の外に目を向けた。
私は、冷静だった。
あんなに大切に思っていた我が子を目の前にして、私は無関心だった。
夕方ごろになると起き上がれるようになった。それでも痛いのでベッドからは動けないが。
起き上がっても特にやることがないのでぼんやりとするしかない。
実弥は着替えを取ってくると言って1時間ほど前に病院から出ていった。
つまり、私と赤ちゃんの2人きりだった。
赤ちゃんはほとんどすやすやと寝ていた。時々手足がバタバタ動いてびっくりする。
……今の私は何をするにもやる気がない。
生きていくには何かをやらなきゃいけないのに、私はそれができそうになかった。
ただただそんなことを考えていると、赤ちゃんが泣き出した。
「おぎゃあ、おぎゃあ」
………どうして泣いてるんだろう。
赤ちゃんの鳴き声って不思議だなぁ。小さいのに大きい声出すし。…一番の問題はなんで泣いてるのかわからないってところ。