第84章 黎明
気配がなくてすごく静か。
怖くて1人なのが嫌だったけど、行かないでとは言いづらい。実弥を見送って、ため息をついた。
「……これからどうしよう。」
とにかく気力がわかない。
思えば…。たくさん仕事したし、いろんなこと解決するために頑張ったけど、それからどうしようかとか何がしたいのかとか全然考えてなかった。
将来とか…大人になっても見えないもんだな。
みんなが幸せになってくれればって思っていたけど、自分がどうなりたいかなんて考えたこともなかった。
……だって自分のことは本当にどうでもよかった。
でも死なないで生きることを望んでしまったわけだし。これからちゃんと考えないといけないよね。
ぼんやりとそんなことを考えていると、先生と実弥が部屋に入ってきた。
「気分どう?」
「…問題ありません」
「そうよかった。お疲れ様。赤ちゃんは元気よ。とっても元気な女の子。」
…そうか。やっぱり女の子だったのか。
「停電した中で出産だったからねぇ、昔ながらのお産だったわ。苦しかったでしょう。」
「…叫んでいたのは覚えています。」
「輸血も良い人がいたからねぇ。お知り合いなんだって?継国のところの双子のお兄ちゃん。」
…ここら辺に実家があるって言ってたけど、この先生も知っているのだろうか。馬鹿にするわけでもないけれど、みんな仲がいいのがさすが田舎って思う。
「痛いうちは動かないでね。うちはいつまでいてもらってもいいから。こんな田舎じゃ妊婦さんなんて滅多にいないしね。」
「ありがとうございます。」
痛いうちはって言うけど、この痛いの取れる日くるんか…!?
「寝ていてわからないだろうけど、赤ちゃん生まれてから5時間くらいしかたってないのよ。」
「…はぁ!?5時間!?」
「ええそうよ。二年間くらい寝たつもりでいたでしょう?だからあなたまだまだ安静にしていないといけないの。わかる?」
……えーーーーーーーーーー
なんていうことだ。
あんな壮大な夢を見ていたのに!!5時間!?ファ!?
「でもあなた、半分気絶してたから何も覚えてないわよね。もうドバドバ血が出てこの子死ぬんじゃないかと思ったわ。」
ニコニコ笑顔でそう言われ、私はから笑いで返した。
……そんな冷静に言われましても、困るのですが…!?