第84章 黎明
その言葉を聞いて優鈴はため息をついた。
「俺、スマホが水没したから連絡取れないんだよねー。ちょっと外に人に聞いてくるよ。あんたはまだ寝てる?」
「いや、私ももう行こう。」
「2人ともどこ行くの?私も行く!」
「「大人しくしてろ」」
そう言われても、今は1人でいるのがすごく嫌だった。
また変なことを考えてしまいそうで…。
「……行くって言ってもお前立てもしないだろ。大人しく黙ってろ。」
「だってーー」
「何弱ってんの?他にもどっか痛いとこあんの?」
「痛くないけど無理!誰もいない空間が耐えられない!!」
「はあ?お前、どうせ気配のせいでいつも賑やかだろ。じゃあ俺たち行くから。行きましょ、巌勝さん。」
「ああ。」
2人はピシャリと扉を閉めて出ていった。
くそう、優鈴のやつ、絶対絶対動けるようになったら覚えとけよ。
気配のせいで賑やかって言うけど_________
(_________あれ?)
私は首を傾げた。
でもまだ目覚めたばかりだし、と考え直す。
「……あの夢なんだったんだろうな…」
夢、だったのだろうか。
あれは本当にあの世だったのではないか。
そうだとしたら、私を地獄で待っているのは他の誰でもなく黒死牟ということか。
……ちゃんと成仏できたのだろうか。
あんなに傷だらけになってしまって、申し訳ないことをしたか。私だけ戻ってきたのだろうか。
繋いでいた手の感覚がまだあった。
阿国を前にして、幸せになれというその姿が目に焼き付いていた。
………それに“彼女”とか呼んでいたけど、普通ああいうところではあの子って言わないかな。いや、普通とかないか。人それぞれだよな…。
でも…気になるし後で聞いてみるか。
「おい待てっ!!待ってッつってんの!!」
すると、廊下から慌ただしい声が聞こえた。
「病院で走ってんじゃねーーーーー!!!」
優鈴が怒鳴った時、また部屋の扉が開いた。