第84章 黎明
「ちょっと、何の声ー?」
聞こえてきた声を聞いて驚いた。
「優鈴!?…ッ、ててて」
「え、大丈夫?」
部屋に入ってきたのは優鈴だった。袴にタスキをかけて、手には何か水の入った桶を持っていた。
「え…何時代…?」
「こ、これはさっきまで書道してたから…!!」
優鈴は青い顔でそう答えた。
?いったい何が???
「…たまたまこの近くに来ていたようだ。雨の被害で帰るに帰れないのでボランティア活動に参加しているらしい。」
「……日帰りの仕事だったから、衣装で移動してて袴しかないの…書道の衣装だから別に汚れたって構わないし、作業着ががわりにしてるってわけ。この病院、避難所になってるから人が集まっててさ。」
優鈴は妙に深刻な面持ちだ。…さては。
「わかった。ハルナちゃんも一緒なんでしょ!!優鈴のパフォーマンス見に行ってたら帰れなくなっちゃったとか!!」
「……大当たりだよクソ野郎…」
優鈴はため息をついて水の入った桶を私の枕元に置いた。
「そんだけ話せるなら元気みたいだね。…で、なんで手なんか繋いじゃってんの?」
「こうしてると安心するんだよね。」
「…流石に私もフラフラする。」
「あんた、極限まで血抜かれてたもんね……」
優鈴はドカッとベッドのそばにあった椅子に腰掛けた。
…いや、なんだこの状況。
元鬼殺隊の柱2人と上弦の壱って。何だこりゃ。
「は本当に安静にしときなよ。傷が開いたらもう血を提供してくれる人いないからね。巌勝からずっと血をもらうことなんてできないでしょ。」
「…う、うん。て言うか痛くて動けなくて…。」
「ああそう。お前、痛いとかわかるんだね。安心したわ。」
「おいこらどういうことだ」
「だっていつもどんなことがあっても動き回るんだもん。あ、言い訳すんなよ。お前の日頃の行いが悪すぎるんだからな。」
コテンパンに言われるも言い返せなかった。
「動けるようになったら覚えとけよ…!新技でぶっ叩いてやる。」
「新技!?え何こわ」
「おい、それよりアイツを呼ばなくていいのか。」
突如、巌勝が口を挟んだ。
アイツ?誰だろ??