第84章 黎明
なんとも情けないことか。
…でも
「痛かった…人生終わると思った…」
「48時間かかったそうだ。」
「…それ死ぬやつじゃん……」
「生きている分際で何を言うか」
巌勝は私を鼻で笑った。
あー腹立つ。腹立つけど安心する…。
「…とりあえず目が覚めたのならもう大丈夫だろう。看護師を呼んでくる。」
「待って」
私はぎゅっと巌勝の手を握った。
「何だ?」
「ここにいて」
「は?」
「あなたの手を握ってると安心するの」
巌勝は顔をしかめた。
「変なやつだな」
しかし、邪険に扱わなかった。
彼はまた私の横に寝転び、手を繋いでくれた。
「何はともあれ、一勝一敗だからね」
「は?お前との勝負は私が勝っただろう。」
「いいえ。ちゃんと私勝ったわ。」
「…頭がおかしくなったのか?」
私はフフッと笑った。
「いつか見せてあげるね。霞の呼吸の必殺技。」
巌勝はため息をついた。
「阿国も似たようなことを言っていたな。」
「また手合わせする?」
「お前と?冗談だろう。」
「やろうよ。君と闘うと楽しいから。」
「…考えておく。」
ちょっと迷ったような答えだったけど本当に嫌なわけではないらしい。私は先の楽しみが増えたと思って期待することにした。
「ねぇ、巌勝」
「なんだ?」
「私は強かった?」
「ああ。1人の人間にあれほど苦戦したのはお前だけだ。」
その言葉だけはどうしても現実で聞いておきたかった。ホッとして胸を撫で下ろす。そうか。私の訓練の日々は無駄ではなかったんだ。
「…まだ寝ぼけているのか?」
「ん?」
「全部終わった顔をしているがどうした?」
「え、今しがた長旅を終えてきたところなんだけど。」
「…やはり寝ぼけているのだな。」
?????
一体何のこと言ってるんだろう。
「生まれた子供のことは触れないのか?」
____________子供
「うえええぇ……??????」
「何だその声」
「お、おおお、おおおおおおおおおおおおおおおお」
私はワナワナ震えて起きあがろうとした。
が。
「いっっったッ!!いったい!!めちゃくちゃいてぇ!!痛いぃぃぃーー!!」
「阿呆めが」
私が痛みに悶えていると、部屋の扉が開いた。