第12章 雨晴らし
「阿国」
私はにこりと笑いかけた。
「今日はきてくれてありがとう。」
「……ッ、うん。」
今にも泣きそうな顔で阿国が首を縦に振った。
「また…」
会ってくれるか、と聞こうとして言葉を止めた。
ふと無一郎くんを思い出した。あの子も全く同じことを言ったのではないのか。それなのに私は突き放した。
「……話したいことがあったら、言ってね。」
とてもではないがその言葉は言えなかった。
「うん。」
阿国はぎゅっと私の手を握りしめた。
「、あなたも」
私の祖先、私以上の力、私よりも優れた思考回路。
阿国は全てわかっているのだ。私が今嘘をついたことも、何もかも。
悟られたことを私も悟る。私たちは不思議な力で結ばれていた。
「うん。」
私は首を縦に振った。
その後、すぐに胡蝶姉妹は阿国を連れて帰った。
カナエは笑っていた。
来客がいる間は一度も姿を見せなかったおはぎがテーブルの椅子に座る私の元へトコトコとやってきた。
「おはぎ」
「にゃあ」
「…今日、何して過ごそうね…」
何だか疲れてしまった。全ての力が失われた気になって、今すぐにでも何もかも投げ出したい。
「……おいで」
おはぎを抱き上げ、ぎゅっと抱きしめた。
その温もりにただ癒されたかった。
おはぎは嫌がらなかった。