第83章 月霞
更にスピードが上がる。力も段違いだ。
お互い傷が増えていく。
痛い。
痛い痛い痛い。
でも。
「月の呼吸」
「霞の呼吸」
サイコーに楽しい!!!!!
またぶつかる。刀同士がミシミシといやな音を立てていた。
「はぁ…ッ、はあ」
「…ッ、まだ、動くか…!!」
「そっち、こそ…!!」
足が震える。しっかりと立つのも難しい。
「…もっと、余裕だと思ったんですけど。」
「……全盛期の体で戦ってもこんなものだろう。」
…そろそろいつも通りの動きができなくなる頃か。私は巌勝より体が小さいから、出血がこれ以上増えると厄介だ。
……ったく、腕の二本くらいはスパスパ切ってやりたいところだけど難しそうだな!!
私が突進すると、巌勝が叫んだ。
「この亡霊が!!いい加減に倒れろッ!!!!!」
そのオーラに身震いする。しかしすぐに心を落ち着かせた。
「絶対に倒れない!!お前に勝つまでは!!!」
私の叫びに巌勝も少し怯んだ。
「ならばやってみせろ!!」
巌勝が踏み込んだ。
…!はやい!!ここで加速するのか!!
突っ込んできた巌勝の技を受け止める。そのおかげで体制が乱れた。
「終わりだ」
その声が聞こえた直後、私の胸元に刀を叩きつけた。
そのまま地面に押さえつけられ、背中を打ちつけた。
………受け身は取ったけど、痛い。肺に一瞬だけ息が入らなくなった。ゲホゲホとむせていると、目の前に巌勝が立った。
「私の勝ちだ。」
「……!!」
「………改めて認めよう。お前は…強い。たった一人にこれまで手こずるのはあのときも今もお前だけだ。」
ゲホ、と最後に咳き込む。
ああ、きっとこれで最後だ。
そう思って私は目を閉じた。数秒後、私はカッと目を見開いた。
「何!?」
もうあまり動かない左手で巌勝の刀を掴む。そして絶対に離さない。
「絶対に勝つ!!」
自分の刀を掴むと同時に、巌勝の刀を自分の方に引っ張って。どこにそんな力があるのかというくらいあっさりできた。
「霞の呼吸、最終の型!!」
何度も何度も。
お前のことを、夢で見てきた!!