第82章 千年の子守歌
違和感に気づくと同時に抜刀。
伸びてきた触手のようなものを切り落としていく。
「誰だ!」
私は叫んだ。
いや、誰かは気配でわかっていた。だから誤魔化すように叫んだ。
嘘だろ。
おいおい、なんでこんなことになっているんだ!?
「…まだ女がいたのか」
すっと姿を見せたのは、若い一人の男だった。
それはどこからどう見ても…。
「無惨!?」
「______貴様、なぜその名を知っている?」
えええええええええええええええええええええ
どういう状況!?え!?なに!?ヘルプミー!!
「なんだ?なぜ顔が似ているのだ?まさか畜生腹の娘だったのか?」
「…え、双子ってこと?私は一人っ子だけど…ねぇ、冗談ならもうやめようよ、ね??」
そう言ってはみたものの、無惨はぎろりと私をにらむだけだった。
「そこを退け。私はその女どもを殺さなくてはならない。」
「え、この期に及んでまだそんな中二発言してるの?」
「意味のわからないことを…」
次の瞬間、数え切れないほどの触手が伸びてきた。
…ああ??????なんで攻撃してくんの、こいつ。
「霞散の飛沫!!!」
そっこう抜刀してすべて切り刻む。
飛び上がってすべて切り落とした後に地面に着地する。
…うん、久しぶりだけど調子は良い。
「おお!そなた、武士か!?」
「ぶっ…一般女性ですけど!?ちょっと戦えちゃうただの一般女性ですけど!!!」
チン、と刀を元に戻す。
…なんだ?なんか、無惨弱くね??
「よし、ひとまずあなたたちは誰だかわかんないけどここで会ったのも縁だし。このまま逃げてちょうだい。」
「!?そなた、一人でたたかうつもりか!?」
「だって、あなた赤ちゃん守りたいんでしょう?」
私が言うと、彼女はぐっと拳を握りしめた。
「私は神の子の寵愛を受けし者ぞ!誰かに守られるほど弱くはない!!見ず知らずの女武士に命を背負わせることはできぬ!!!」
「え、ええ??」
何を言っているのかよくわからない。
「誰かを助けたとしても、誰かに助けられるなど許せぬのだ!!」
彼女ははっきりとそう言った。