第81章 見えないもの
そういうことは、全部君に教わった気がするよ。
後悔してる。
「わかってよ」
最後くらい、大嫌いなままでいてよ。
良い人にならないで。
「わからねェ」
真っ直ぐ、全部、ぶつけてこないで
「俺は全部知りたかった。話して欲しかったし逃げるのもやめてほしかった。」
「……」
「でもお前が苦しんでるの気づかんかったんだ。俺が馬鹿だった。今回もいつもみたいに戻ってくると思って追いかけなかった。本当にごめん。」
悪い人でいてよ。
私の人生で1番、最低最悪なクソ野郎でいてよ。
私はぎゅっと手を握りしめた。
「私だってわからないんだよ、すっごく苦しいし、もう嫌だし、私が何回突き放しても、別れたいって言っても、追いかけてくるのが怖くて、離れらなれないのがいやで、誰かと一緒にいるとかあり得なかったことなのに。」
歩くとふらりとよろけた。倒れる前に実弥が支えてくれた。
「なんで、なんで君なの」
「…」
「なんで君だったの」
ありきたりな、少女漫画みたいな恋だったと思う。
私の青春時代は実弥に捧げて過ぎ去っていった。
でももう、私は少女漫画みたいな、綺麗な女の子じゃない。
わかってたはずなのに、十分思い知っただろ。
「なんで実弥だったんだろう…!!!」
見捨てればいいだろ。
自分のいうこと全部無視して、構わずにさ、好きなことばっかして、秘密ばっかりで、内緒ばっかで、気づいたら死んでそうなこんな女、捨てたらいいだろ。
みんなそうしてきたんだ。
深く関わらないうちに、私の前から消えて、死んで、そして最後は私からいなくなった。
どうして実弥はそうしない。