第81章 見えないもの
「お前らこんな時まで喧嘩せぇへんと気が済まんのか!!」
アマモリくんが怒鳴り込んできたところで2人揃ってしゅんとなる。
「このどんぐりの背ぇ比べ夫婦が。くそしょうもない理由で喧嘩しよってからに!」
「どんぐりって…」
「お前らどっちもどっちや!距離置いて頭冷えたやろ、良い加減落ち着いて話したらどうやねんな!!」
ピシャリと言われてぐうの音も出ない。
「十分反省した!?」
「「しました…」」
「ほな言いたいこととかまだあるやろうけど、ひとまず今の状況整理な。」
アマモリくんはため息をついてどうしてここに来たのかを話してくれた。
「俺は猫を引き取るために不死川連れてあの家に行った。そしたらキリキリちゃんがいーひんってことで不死川が慌てるから、とりあえず行きそうな場所探そうかってことでここにきたんや。」
「………うぅ、アマモリくんの不動産屋に行ったのが間違いだったか…」
「せやね。ほんまに逃げよう思ったら、逃げ場所は一切の知り合いに知られんようにせないかんね。けどまぁ知り合いに頼みたいってのはわかるわ。
で、君は今どういう状況なん?」
「…見ての通りお産真っ只中です」
アマモリくんはため息をついた。
しばらくの沈黙の後。
「「ええええええええええーーーーー!?!?!?!?!?!?」」
実弥とアマモリくんが同時に叫んだ。
「おっおさッおさっおさささささささ????????」
「おいっ、大丈夫か、痛いのか、辛いのか、キツイのか!?」
「黙れ男ども!!!!!」
私が叫ぶと、2人ともまたシンと黙った。
「…こちとら24時間まるまる陣痛でそろそろ発狂しそうなんだ……静かにしてくれぇ…!!!」
涙ながらに訴えることでようやく理解してくれたのか2人は黙ったまま頷いた。