第80章 大バカ野郎どもへ
「キリキリちゃんはここにいるけど、会うかどうかは本人に聞かなわからへんしそれまでの時間稼ぎって感じやな。」
俺たちは部屋に通されてシャツとズボンの着替えをもらった。
といっても、上等なものでもなくこの病院にストックされているものだという。泥まみれのスーツはとりあえず干してもらえることになった。
とりあえず本人確認のために俺らは身分証のコピーまで取られた。うん。警察に通報されるよりはマシやね。
停電しているので俺の懐中電灯で照らすはめに。…なんかホラーや。
「で、こっからどうするよ。無理にでも会うんか?会いたくないって言われたら?」
「……そんなこと考えられねぇよ」
「阿呆か。考えろや。」
「なんでお前そんなに冷静なんだよ」
そう言われて、俺は首をかしげた。
「何言うてんの、パニックやで。めちゃ困っとる。」
「…落ち着いてるようにしか見えねぇ。」
「………ほな泣いたろか?」
「やめろ」
なんやこいつ。
「そんで、ほんまにどうするんよ。」
「………ひとまず、雨が止むまで戻りたくはねぇな。」
「…同意やな。」
不死川も頭は回っていないらしい。まあ、睡眠も食事もろくにとってへんからな。
「飴ちゃんいるか。一応無事やで。」
「…食う気にならねェ」
「難儀やな」
俺は一つ口に含んだ。
すると、部屋がノックされて扉が開いた。
看護師さんはペコリと頭を下げて話し始めた。
「あの…不死川さんなんですけど、今この病院にいます…」
「!本当ですか」
「はい。ですが、あの…大変…ええと、言いにくいのですが……」
看護師さんはモジモジとした後、意を決して声を出した。
「『私の顔を見にきたら一生呪ってやる』……と、おっしゃられていて…」
「「……」」
俺は立ち上がり、呆然と立ち尽くす不死川のかたをポンと叩いた。
「もうここまで来たら呪われたらええやん。お前呪われなくても明日死ぬかもしれへんで?」
励ましのつもりで言ったのだが、不死川は何も言わなかった。