第80章 大バカ野郎どもへ
愛ってなんやろうな。
不死川みたいに全部を受け止めようとするんも、あの子みたいに嫌なこと隠して好きな人たちみんな遠ざけて守るって言うんも等しく愛やと思う。
愛なんてクソだと、どこかで思っとった。
けどキリキリちゃんがそれを消してくれた。あの子が俺にも優しくしてくれて、ほんで大好きになった。
(どっちが悪いんかなんて聞いて、嫌なことしたな俺)
今更思った。不動産屋に来たキリキリちゃんに、俺は真っ先にそう聞いたけど。
悪いことなんて誰もしてへん。
「アマモリ!」
俺の足が失意で止まりかけた時、前方から不死川の声がした。
「多分もうすぐだ。」
俺が顔をあげると、カラカラと音がした。
_______風車
「目印か?」
「多分な」
真っ赤な風車は山中の獣道で確かに異様な雰囲気を放っており、目印というにはぴったりやった。
「ほな、この道で合ってるんか…しかし誰がこんなかざ…ぐる……ま……」
「アマモリ?」
………風車?
……………。
「すまん、何でもない。ちょっとぼうっとしてきた。…急ごか。」
「ああ、この雨はキツイ。」
…そう思ってんなら引き返してくれや。
なんて文句も言い出さんと俺はついて行った。偉い!!!
そう言うことで雨の中、転びそうになりながらも大の男2人で獣道を抜けた。
あたりは暗かったが、曇り空と停電のせいで本当はまだお昼の時間にもなっていない。
「ほんで産婦人科はどこや?ここ携帯も圏外やし、マジで見つけようが…」
と、キョロキョロした時にこの田舎では珍しい大きな建物が見えた。
「多分あれだな。」
「はあー、ほんまに見つけてしもた。どないすんのよ…男2人でなんて言って扉叩くんよ…。」
俺の嘆きは完全に無視して不死川は歩き出した。
お互いドロドロのボロボロだったが、もうここまできたら行くしかなかった。