第80章 大バカ野郎どもへ
女が言った道は確かに古く、コンクリートで舗装もされていない。いわば山の中にある獣道みたいなもので、傘をさしながら歩くなんて到底できなくて俺は入り口でもう傘を置いていった。
…後で回収するつもりやから、それなら問題ないやろう思って。
霧雨とはいえ、雨が降っているなか歩くのは辛い。しかも俺と不死川はスーツやったし、全然この道を歩くには向いてへん格好やった。
「これでキリキリちゃんの手がかりなんもなかったら、お前どうするつもりや!」
俺は足を何度も滑らせた。木にしがみついたり蔦をつかんだりしたおかげで手がドロドロだった。
「不死川!!」
不死川はどんどん先を行く。
女は目印があるとか言ってたけど、正直道が合ってるかどうかなんてわからん。ただ俺は不死川の背中を追いかけた。
(…こりゃ、行くのやめようなんて説得はきかへんな。)
恐らくアイツの中に、キリキリちゃんに会えないという考えはない。
信じて歩いとるんや。迷ってたら俺みたいに迷いが出る。
……ようそこまで信じるで。
あんな嘘まみれの女の子、信じたって辛いだけやんか。
全部隠して、それでさようならしようとしてるんやで。あの子は。
ええやんか、別に。
______________なんて、前世の俺は考えとった。
ああ、不死川。
あの時の俺に、お前みたいな勇気や気合いがあったら、あんなことにはならんかったんかな。
キリキリちゃんが死ぬこともできひん妙な鬼になることなく、あの夜にお前に看取られて安らかに逝けたんかな。
俺は、結局あの子より先に死んでしもうたし。
なんでそこまで行けるん?
なんでキリキリちゃんの全部に触れようとするん?
みんなしてこんかったのに。できひんかったのに。だってあの子が隠すから。
………今だって、どうしてそんなに足が前に進むのか俺にはわからへんよ…。