第80章 大バカ野郎どもへ
女はすっと道の奥を指さした。
「雨のせいで土砂崩れが起きた。先には行けないよ。電線が倒れたせいで停電も起きている。外は危険だ。」
その言葉で少し女への不信感が消えた。ああ、そうか。きっとこの村の住人なんだ。
雨の中飛び出した俺らを心配してくれたんやと、そう思った。
「ええと、ほなどうしたええかな。この先の病院に行こうとしとったんよ。電話も繋がらへんし。」
「…産婦人科?」
「せや。」
女はじっと固まる。ローブのせいで顔は見えないが悩んでいるようだ。
「この地域すべての建物が停電しているんだ。どうせ病院は閉まってるさ。それでも行くのかい?」
「……一応、行くって言うとくわ。」
本当は行く気なんてなかったが不死川が心配だったのでそう答えた。だってこいつ、土砂崩れンとこ飛び越えていきそうなんやもん。
「…道はあるよ」
「!本当か」
不死川がわかりやすく反応した。
……なんや、おとなしいふりしてやっぱりすぐにでもいきたかったんやんか。
「………昔使われていた古い道だ。この一本道を歩くよりは早く着く。ただ足場が悪いから、みんなもう使わない。」
女はすっとある方向を指さした。
「目印があるから迷わない。行くなら行くといい。ただ、行かないことをおすすめする。」
「……」
「言っておくが、電話が使えないのだから通報も何もできない。……万が一のことがあっても助けてはやれないぞ。」
女はそう言った。
しかし、不死川はもう動いていた。
「わかった、ありがとう!」
「ちょ、行くんかいな!?」
「アマモリは家で待っていてくれ!!」
「……っああもう!放って置けるわけないやんかああ!!」
俺は叫んで不死川を追いかけた。
「…猫は私が預かろう。君たちが生きていることを祈るよ。」
「ああ!ぜひとも祈ってくれや!!」
覚悟を決め、俺たちは彼女の言うその古い道に足を踏み入れた。