第80章 大バカ野郎どもへ
家に戻ると不死川はすうすう寝ていた。
俺ももう限界だったので眠った。2人で雑魚寝。
目覚ましも何もセットしていなかったが、2人とも7時とかには目が覚めた。
雨はまだ降っていた。
「うわっ、すげぇ霧雨や」
換気のために窓を開けたがすぐにやめた。
「病院に電話してみたけど、繋がらねェ。」
「ハハッ、雨の日って電波悪くなるしな。」
笑い事じゃないのについ笑ってしまい、慌てて顔を引き締める。いかんいかん。不死川にとっては死活問題や。
「ほんでどうする?海行く?」
「……病院なぁ。」
「野郎2人で産婦人科行っても目立つしなぁ。」
また笑いそうになったが堪えた。
「その間、おはぎちゃんは待っててもらわなあかんし。」
「ミーミー」
「おお、かわいそうに。煮干しあげような。」
寂しそうに鳴くのが愛らしくて、ついついエサをやってしまう。
「まあキリキリちゃんのお願いは猫を引き取ることやし?もう帰っても…」
穏便に済ませようと思ってそう言ったのだが、その瞬間におはぎちゃんが家を飛び出した。
「えっ」
「ッおはぎ!!」
不死川が慌てて追いかける。おはぎはというとものすごいジャンプ力で塀を乗り越えた。
「おい待て!どこ行くんだよ!!」
不死川の後ろに俺も続く。雨が降る中、不死川が傘もささずに飛び出したので心配になった。
「にゃあ」
おはぎくんは一本道の真ん中で立ち止まり、俺らを振り返った。
「…ついてこいって?」
「………」
俺が聞いても不死川は答えない。
おはぎくんは再び走り出し、一本道を進んでいく。
すると。
いつの間にか、そこにいた。
昨日海で出会った黒いローブの女だ。
おはぎくんは彼女の足元にすり寄り、嬉しそうにゴロゴロ鳴いた。
「そんなに急いでどこに行くのかね」
女は、やはりちょっと低い声でそう言った。