第80章 大バカ野郎どもへ
しばらく話すこともなくなって気づけば不死川は寝ていた。仕方なく押し入れを勝手に開けて毛布を被せてやった。
仕事の後に直行やったしなぁ…。
さて、明日はどうしようか。ひとまず病院に電話をかけて、また探しにいくんやろうか。
ひとまず今晩は冷静にできたけど…不死川のやつ、またいつ暴走するかわからへんなぁ。
キリキリちゃんがここまでして逃げたんやから…もうええと思うんやけど。ひとまず気が済むまで付き合うか。
(さて、雨も弱なってきたし俺は散歩でもしよかな。)
立ち上がり、玄関まで行くと猫がついてきた。
「なんや、お前も来るんか?」
「にゃあん」
おはぎくんは俺に応えるように頷いた。……面白い猫やな。
「なぁ、俺らどっかであったことあるっけ?」
「にゃー」
なんか既視感があった。いや、おはぎくんに会うのは初めてやないんやけど。
「…君がおらんかったら不死川が泣いてまうからな。一緒にいたってや。」
「にゃあ、にゃあ」
「知ってるやろ。不死川は1人になると寂しくて死んでしまうねん。」
「ミ?」
「死にはせんかな。けど、きっとああいうタイプは心が死んでいくんやと思う。」
キリキリちゃんがいなくなっただけで、あれほど元気がなくなるだろうか。依存しているのは彼女のように思えて、不死川の方にも思える。
あの子は大きい。
いつもまでもいつまでも心に残る。
それくらい、周りを大切にしてくれる。そしてあの子自身は知らん間に消えていく。
残酷なほどあっという間に。
俺は家を出た。車に積んだ傘を片手に、海に行った。