第80章 大バカ野郎どもへ
「ちゃん、雨大丈夫かなって心配で。おかず届けにきたんだけど。」
おじいさんは不審そうに俺たちを見ている。
…まずい。
「俺、不動産会社のもんです!」
「…ああ!この家を管理してるっていう。」
「そう、で、コイツは、えーっと、俺、ここからえらい遠いところに住んでるんで、時々運転変わってもらうためについてきてもらった友達ですわっ。」
嘘も時々は必要なスパイスや。
うん、誰か言うとった。誰か知らんけど。不死川はポカンとしつつも、黙って頷いた。
……ここで夫と名乗らない方がいいって言うのは、まあわかる。
こんな田舎や。キリキリちゃんが身一つで来たことは知れ渡っとるやろうし、夫はいないもんとなってる可能性がある。
ことを荒立てるようはええやろう。
「そのー、さんって人、妊婦ですやろ?会社としても放っておけんくてですね、たまに電話しとったんですわ。そしたらここ数日連絡取れへんで、あれおかしいなと思って見に来たんです。」
「ああ〜なるほど。ええと、それじゃあちゃんどこ行っちまったんかね。昨日はいたのにねぇ。母さん知ってる?」
おじいさんが振り向くと、少し離れたところに野良猫にエサをやるおばあさんが見えた。
「えっ、ちゃん?さぁねぇ。あまり外に出ない子だったしねぇ。もしかしたらお腹もだいぶ大きかったし病院かもしれないねぇ。」
「病院…って、どこにあるんですか?」
「え、っと、この道まっすぐ言ったら着くよ。バスで30分くらい。」
そう言って指さした道は明かりもなく真っ暗だった。
「ッ!」
突如、不死川が飛び出そうとするので俺は全力でおじいさんたちにバレないように足を踏んだ。
(落ち着け、こんな時間に病院が開いてるわけないやろ。)
(…!)
(このおじいさん詳しそうやしもう少し話聞こうな。)
不死川を下がらせて、俺は一歩前に出た。
「ほな、昨日まで元気しとったんですかね。」
「多分ね。差し入れ持ってきてたらニコニコして受け取ってくれたし。」
「そうですか、ありがとうございます。それなら安心です。」
俺がお礼を言うと、差し入れのおかずをありがたくもらった。