第80章 大バカ野郎どもへ
(ブレーカー落ちとる…)
風呂場のブレーカーを確認すると、確かに落とされていた。……キリキリちゃんがやったんやろうか。
雨は降っているけど停電するような勢いはないし。……十中八九そうやろうな。
ひとまずブレーカーを上げて家中の明かりをつけた。
「不死川、猫は?」
「…いた」
そういう奴の腕の中には確かに猫がいた。ゴロゴロ喉を鳴らしている。
「で、キリキリちゃんがいーひんってことか。」
「……あァ。」
「ブレーカー落として家出たみたいやわ。旅行に行ったか…まあ何にせよしばらく戻ってこおへんつもりやろうな。見てみぃ。」
さっき台所で拾ったゴミをプラプラ見せつけた。
「猫のエサ、すっからかんや。」
不死川はなんとも言えない顔でそれを見ていた。
「猫捨てて夜逃げ、って感じか?」
「それはねェ。」
「せやね。夜逃げするならあの子は猫も連れて行くはずや。」
………何か、ひどくひっかかる。
「しかし、ここら辺出かけるような場所内で。畑か田んぼしか。神社は車で行かなあかん距離やし、こんな真夜中に海行くようなこともあらへんやろ。」
「海…」
すると、不死川は何か思い立ったかのように足を動かす。俺は慌てて止めた。
「ばか!こんな夜にどこ行こう言うねん!!」
「海だ!アイツ、多分海になんかあるんだ!」
「いや、待てって!!海は…!!!」
あの子が海に??
いや、ありえない。
それならこんなことしなくていいはずや。
こんな回りくどいことせんと、あの子は静かに消えていくはずや。
不死川が暴走しかけた時、玄関の扉が開く音がした。
それに反応して不死川が、とそっちに向かう。俺はエサのごみを放り出して慌てて追いかけた。
猫ちゃんはかわいそうに置いていかれてみいみい鳴いていたので俺が抱っこして連れて行った。
「あー?お宅ら、どちら様?」
しかし期待もむなしく、玄関にいたのは見知らぬおじいさんだった。