第78章 昔からの憧れ
アマモリくんが尋ねる以外は、家の周りのおじいさんたちが野菜や作りすぎたおかずを持ってくるくらいだった。
私はもう外に出ることはなかった。
また軽トラのおじいさんが家に来て、ニコニコと陽気に笑ってジャガイモやらをくれた。
「ありがとうございます…いただいてばかりですみません。」
「いやいや、余るほどあるからもらってくれて嬉しいよ。そういえば、もうあの神社に行ったかい?あそこにお参りすると安産になるとか、そういう噂があるんだよ。」
「噂…ですか。」
おじいさんはまた昔話を聞かせてくれた。
「ほら、ここに住んでた画家さんの話しただろ。医学の知識もある人でね、出産のことも勉強してくれて、よく産気づいた妊婦のところに行っては面倒を見てくれてたんだ。
その時、一緒に住んでいた女の人は絶対についてこなくてね。何をしてるのかと思ったら神社で子供が無事に産まれるようにってずっとお祈りしてるんだよ。
ワシはまだ小さい時にその様子を見てたんだ。雨が降ろうが雪が積もろうがずっとそうしてた。しかも不思議なことにここら辺では死産がぱったりなくなってね。それで噂が広まったんだ。」
「へえ…。」
「あの神社で結婚式をすると、子宝に恵まれるとかもいうね。この前やってたみたいだけど。」
ああ、アマモリくんと確かに見たな。
「面白いですね。この家にそんな人たちが住んでいたなんて。」
「……もう一回会ってみたいねぇ。」
おじいさんはしみじみとそう言った。