第78章 昔からの憧れ
じゃじゃ馬といわれないように遠くから眺める。
「お、出てきた」
神社の中から紋付き袴の新郎と、白無垢の新婦が姿を見せた。
「……」
わあ、と参加者の声が上がる。
二人とも幸せそうで、いい結婚式だなと思った。
「キリキリちゃんって結婚式初めて?」
「いや。鬼殺隊にいるとき、助けた人が招待してくれて一回だけ結婚式に出たことがある。…それをカウントに入れるならあるかな。」
「まあギリ一回あるって感じやな。」
アマモリくんはけれけら笑った。
「でもすぐ帰った。安城殿が身支度とかしてくれたけど、長くいられなかった。」
「なんで?」
「なんか…見てられなくて。」
「なんやそれ。」
彼は、冷静に言った。
「きっと幸せに見えたんやろうね。」
「…?」
「幸せなものはまぶしくて…目をそらしたくなるほど、輝いとんねん。」
……輝く、か。
「今は…見たくないとは思わないよ。」
確かに、あの頃はそうだったかもしれない。
でも今は目をそらしたくなる幸せとか、よくわかんないや。
「昔からさ、ちょっとこういうの憧れてたんだよね。海のそばで暮らして、小さな神社で白無垢着るとかさ。」
「へえ、こういうの苦手やと思ってたわ。」
「うん苦手。だから憧れってだけ。白無垢なんて私が着たら汚しちゃうよ。」
「そういうの大事やと思うけどなぁ。」
「憧れは実現しないからいいの。」
私はふふっと笑った。
「帰ろっか。ご飯食べてく?」
「それはええ。」
「あ、そう。」
……私のご飯ってそんなに拒絶するほどまずいのだろうか。まあ自分でもまずいって思うけど!