第78章 昔からの憧れ
おじいさんが若い頃って…失礼だけど何年前だろう。だとしたらもう画家さんもその猫ちゃんも、女の人もいないだろう。
「あの人たちはもういないけど、いざって時はワシが助産師さん呼んでくるからいつでも言っておくれよ。あ、これもやろう。甘いお菓子。」
「わあ、ありがとうございます!」
おじいさんは家の中に荷物を運んだ後に帰って行った。ああ、優しい人みたいで良かった。
『、この家いいぞ。ところどころ変な音がするんだ。』
家に帰るとおはぎが大興奮で出迎えてくれた。野良猫たちもひとまず去ったみたいだ。
「まあ~古いお家みたいだしね。でも楽しいなら良かった。」
小さいけど庭もあるし。まあこれならおはぎも楽しいかな。
「お花植えたりしたいけどそれは無理かな…。」
庭はあまりいい状態ではなく、整えるだけで時間がかかりそうだ。
「今日は野菜たくさんもらったし、野菜炒めにしようかな。」
なんとなく今後の生活の楽しみが見えたところで、私はようやく腰を下ろすことができた気がした。
次の日。
せっかく海のそばに暮らしているので海まで散歩に来た。
「ええところやなぁ」
なぜか遊びに来たアマモリくんも一緒だった。
「来てくれるのはうれしいけど、仕事大丈夫なの?」
「今日は有給とった。」
なんだか、アマモリくんと海とか懐かしいな。…一緒に旅をした前世を思い出す。
「そういや、ここらへん神社あんねん。安産のお参りでもしような。」
アマモリくんの車で神社に行くと、そこにはやたらと人がいた。
「何かイベントかな…?」
「ああ、ありゃ結婚式やな。お参りは今度にしよか。」
じいっと見ていると、アマモリくんは駐車場に車を停めた。
「ちょっと見ていく?」
私は黙ってうなずいた。