第78章 昔からの憧れ
と、そんな生活も慣れてきたところですぐに引っ越し。
荷物はちまちまネットショッピングで買い揃えたので多分もう向こうにあるはず。私は身の回りの荷物だけを持って旅館を出ることになった。
「もう行くんか。」
「はい、おせわになりました。」
「そうか。また来てね。かりんとう食うか。」
私は何気にそれを口に含んだ。
甘くて美味しい。
「…これ、アマモリくん好きでしたよね。」
「ん?」
「彼がよく食べてました。かりんとう。あんな態度ですけど…本当に鉄珍様のことが嫌いってわけじゃないと思います。」
余計なお世話かと思ったがついそう言ってしまった。
「そうか。」
鉄珍様は少し嬉しそうだった。
「というわけで!やってきました、新居ーーーーー!」
「にゃあ〜ん」
タクシーとバスを乗り継いでほぼ半日。いや長かった。ようやく解放されたおはぎは嬉しそうに家の中を歩き回っていた。
『おい!なんか知らない奴らがいるぞ!!』
「あらぁ、この家の住人かしら。」
おはぎが家の庭にいた野良猫を見てにゃんにゃん鳴いていた。
「こんにちは」
『…人間がこの家に…』
「引っ越してきたのーあ、煮干したべる?」
『あ、それ俺のおやつ!!』
一匹にあげてたらなんかぞろぞろ寄ってきて、合計で猫が6匹ぐらいになっていた。
…猫が多いんだな、ここら辺。
『なんて優しいメスだ!』
『人間のメスが魚配ってるってほんとー!?』
『人間のメス見てみたい!!』
『メスだー若いメスだー!!』
「メスって言うのやめてもらっていいですか!?!?!?」
おはぎと暮らしているうちに猫の話す言葉がわかるようになったんだけど、猫独特の表現がすごく心にくる…。
まあ、メスなんだけどね!?若い人間のメスなんだけどね!?