第78章 昔からの憧れ
いや、まあ、出て行くって言い出したのは私だし。
………やるしかないよなぁ。
ひとまず畳の部屋に寝転がり、適当にお金の計算。妊娠中もめげずに仕事を続けていたおかげでこれは困らない。
でもぼうっとしていたらすぐなくなっちゃう額ではある。
というわけで、簡易的な持ち運び用のパソコンとタブレットを繋いでお仕事再開。
私の荷物は少ない。もともと自分の物にこだわりとかないタイプだったし、まあこれでいいんだけど。
それなのにどうして悲しくなるんだろう。
こんな時でも絵を描いている時だけはまあ、こころ安らかになる。
ひとまず…まあ、引っ越し済ませてちゃんと全部やって、その後に実弥に連絡すればいい。どうやら彼の方から連絡してくる気配はないし。
自分から出て行っておいで連絡を気にするとか馬鹿みたい。だけどそれなら私も心置きなく動ける。
ついにここまで嫌われてしまったか、と。
…自分のこれまでの行動を全て呪ってやる。なんでこうなるんだろうか。
その時できることを全力でやった。でもその結果がこれ。
ああ、そうだ。
今まで何やったって良い結果にはつながらなかった。
どうせ私なんてそんな存在なんだ。
ポロポロと涙が落ちる。
……ああ。
そして、全部終わって、何が大切だったとか、そういうことにやっと気づくんだ。
みっともなくしがみついた。
いつまでもいつまでも。
でも私が全部壊した。
そうだね。
壊したのは、私だ。
壊したけど、もういい。
壊れたものを直すのは大変だってわかってる。
疲れた。
もう疲れた。
私も限界だ。
(これでいい。私もそんなに長くはないから。)
ちらっと服を捲ると…やはりあった。
そこには、霞模様の痣。
痣は消えていなかったんだ。また発現した。
痣者は25歳で死ぬ。私は…もうすぐ26歳になる。この時期にもう一度発現したってことはそういうことだろう。
家族のことは…ひとまず解決した。
実弥ともこれでさようならだ。
……もう、あとは時を待つだけ。