第78章 昔からの憧れ
もうどうにもならないと思いながら私は猛抗議した。
「ダメよ!!前に鉄珍様のところにいた時、鉄珍様が実弥に連絡してバレてたんだから!!」
「元はといえばキリキリちゃんが『ルピナスが綺麗』とか不死川に言ったからやろ。」
「いや鉄珍様どんだけペラペラしゃべってんの!?」
あの人どれだけ口が達者なんだよ!!
「ギャアギャアうるさいな!腹くくれや!!俺もジジイに会うの嫌なんやから!!」
「う、うわーーーーーん!」
アマモリくんは鉄珍様を含めて、刀鍛冶の里の人たちに苦手意識があるらしい。特に自分の面倒をよく見てくれた鉄珍様が1番苦手らしい。
私が項垂れている間に、鉄珍様の旅館に着いてしまった。
アマモリくんが私を引っ張り、外に連れ出す。その時に私の荷物まで持ってくれた。
歩くのもままならずにうだうだしている私を見て、アマモリくんは優しく背中を叩いてくれた。
「大丈夫や、キリキリちゃん。俺は見捨てへんからな。」
その後、すぐに旅館の扉を勢いよく開けた。
「ジジイ!女1人と猫一匹泊めてんか!!」
「誰がジジイや」
「………」
私はもう意気消沈でおはぎのケースを抱きかかえていた。
「よう来たな。お腹も大きなったな。」
「…お久しぶりです。」
「おお、おお。またこれはひどい顔や。かりんとう食うか?」
「食いません」
「おお…。それで、今回はアマモリと一緒なんか。どうしたんや?」
グッと黙り込む。
…この人に説明する気にはならないな。
「すみません、いつになるか分からないんですけど……次暮らす場所が見つかるまで、何も聞かずに…誰にも言わずに泊めていただけませんか。」
「ええよ。ワシ、大歓迎。」
鉄珍様は無茶苦茶なお願いも快く引き受けてくれた。
「……ほなジジイ、頼んだで」
「お前は泊まらんのか。飯は。食っとるんか。」
「ケッ、今更うっさいの。」
アマモリくんはベーっと舌を出した。
「ほなキリキリちゃん、またな。」
「…うん、ありがとう」
「とにかく焦らずゆっくり休みや。ひどいこと言ったからって別に気にせんと家に帰ったっていいんやからな!」
私は少し微笑んで、彼に手を振った。
………。
はあああああああああああ、またこのパターンかぁぁぁ!!!