第78章 昔からの憧れ
その翌日、私はアマモリくんのところに行こうとしていたのだがお腹が痛くなって鉄珍様に事情を話して病院に行った。
何が起きたのか分からず、お腹の子に何かあったのかと不安だった。
そして病院には何故か鉄珍様がついてきた。ひょっとこのお面を外さないのですごく注目されて恥ずかしかった。
「あら、そちらの人は?」
「間男です。」
「何言ってるんですか!!!」
診察のために寝転んでいたけど思わず突っ込んでしまった。先生には昔からの知り合いだと適当に言っておいた。
小さなおじいちゃんを間男と信じるのも難しい話だろう。
「あらぁ、赤ちゃんひっくり返ってるわよ。」
「え」
「それで蹴ったから痛くなったのかしら?よかったわねぇ。赤ちゃんってだいたい妊娠後期に元に戻るんだけど、そのタイミングが遅かったのね。」
帝王切開だ〜とかそんな話になっていたのに、まさかのことに驚いた。このままだと自然分娩でいいらしい。
なんだか拍子抜けした。
「それにしてもすごいわね。赤ちゃんだけ守られているみたい。ちゃんの方がボロボロよ。」
そしてやはり私は栄養失調だということで点滴を打ってその日は旅館に戻った。
「栄養の高いもん用意させたから」
鉄珍様は食事も気を利かせてくれた。
いたせりつくせりで申し訳ないと思いつつ、私はさっさと次の新天地へと進む用意を進めるのだった。
お腹の子は時々動いた。
(まだ…)
私はお腹を撫でながら念じるように祈るのだった。
(まだ生まれてこないで)
今日は、病院に行って仕事を進めるだけで一日が終わった。