第78章 昔からの憧れ
その後、不動産会社に戻ってあの家についての話を聞くことに。
すぐさま契約したかったけれど、悲しきかな私はフリーのイラストレーター。
ローンが組めない。
「…一括現金払い……!!!」
「な、無理やろ?」
「いや払えるけど」
「払えるんかいっ!どんだけ稼いどんねん!!!」
うーん、いけるけどほいっと出せる金額じゃないし…。
「色々計算してまた来ます…」
「なぁ、もう仲直りしぃや…」
「…したいんだけどね」
苦し紛れにははっと笑った。
「………キリキリちゃんは強い子や。でも、今はただの女の子やねんで。無茶できる体とちゃうし、不死川は無理せんといてほしいから怒るんやと思うで。」
「実弥が正しいのはわかってる。」
「何がそんなに嫌なん?」
私はぎゅっと口をつぐんだ。
「……今日は家に帰らへんの?」
「私が言い出したことだもん!帰らない!」
「…どこに泊まるんよ」
「おはぎがいると泊まるとこないし、適当な小屋を見つけて…」
「今何時代やと思ってんの???」
アマモリくんは肩を落としてはあ、と息を吐き出した。
「ほんなら俺、もう仕事終わるしちょっと待っててぇな。」
そう言われて私は店の外でしばらく待つことに。
ぼうっとスマホをいじっていると仕事の連絡以外は何も来ていなかった。……ああ、そういえば終わってない仕事がけっこう溜まってきてるんだよなぁ。
仕事の整理をしていると、退勤直後のアマモリくんが私のところに来てくれた。
「とてつもなく不本意やねんけど、ジジイのとこ行こか」
「ジジイ……………もしかして鉄珍様!?!?!?」
「シーーーーっ!店に聞こえるやろ!!」
その後引っ張られるようにアマモリくんの車の後部座席におはぎと一緒に押し込められた。
「ね、ねえ!鉄珍様のところなんでしょ!?」
「せや。猫もいて訳ありの元鬼殺隊なんてジジイくらいしか受け入れへんし。それに前にも行ったことあるんやろ?
あのジジイ、いらん言うてんのにしょっちゅう連絡してくるし聞いてもないのにキリキリちゃんのことまでしゃべってきよった。」
私は大慌てアマモリくんに抗議しようとしたが、虚しく車は出発してしまった。