第78章 昔からの憧れ
「絶対私のこと嫌いなんだよ」
「いや、不死川に限ってそれはないやろ…」
渡されたティッシュでぐずぐずと涙を拭く。
「……阿呆やなぁ、キリキリちゃん。」
呆れたようにアマモリくんはそう言った。
「なんでそないに爆発する前に不死川に言わへんかったん。」
「……言ったら怒る」
「そんなことになったら俺が殴りに行ったるわ…まあ、もっと話聞いてあげたいけど俺仕事中やねん。」
アマモリくんは、ドンっと大量の書類が入ったファイルを机の上に投げた。
「とりあえず、前向きに内見行こか!」
一人暮らし用のペットマンションなんて贅沢なもの、急に押しかけてあるわけもなく。
良さげなところがあまりなかった。なんかファミリーもの向けのやつばかりでムカムカした。
「世の中全員家族に恵まれると思うなよ!」
「シリアスやわ、キリキリちゃん」
うがーっ!と吠える私にアマモリくんが突っ込む。
でもおはぎはどの部屋も気に入ったみたいでにゃんにゃん鳴いていた。
「あとはボロい家くらいしかないけど」
「家?」
「うん。ボロいけど。」
ひとまずそこまで連れて行ってもらうと…。
ずいぶん遠いところだった。海の近くまで行って、ようやく降ろされた。そこは周りに何もないど田舎もいいところで。
田んぼと海と畑、山しかないようなところ。
その家というのは日本家屋で、すごく和の匂いがした。
「一応手入れはしてんねんけど、歩くときしむんよ。」
確かに、床はぎいぎい変な音を立てた。
「言っておくけど幽霊は出えへんよ。なんか昔、お偉いさんが住んでたとかでそれ以来放置されてんねん。」
扉を開けると、少し古びた畳が敷かれていた。
「ここはもう論外…」
「すごい!素敵!!」
「えっ!?!?!?」
「ここ好き!!いくら!?」
「えっ!?えっ!?!?!?」
アマモリくんに教えてもらった情報を聞くと、なんだ全然私でも暮らせる代金じゃん!と勝手に大盛り上がり。
「…変なとこ見せて諦めさせようと思ったのに」
「何か言った?」
「何も言ってへんよ。」
とはいえ即決とは言えず、その日はそれで終わりになった。