第77章 世界一の辛さ
この人のこういう、真面目なようで雑なところが羨ましい。
私はいつも気づいた時には取り返しのつかないことになるから…。
「しはーーん!」
無一郎くんが私を呼ぶ。ひらひらと手を振ると、嬉しそうに笑った。
「僕のが1番飛びますから、見ていてくださいね!」
そのあと投げられた紙飛行機は遠くまで飛んでいった。
…そういえば、私が紙飛行機を教えたんだっけ。私に紙飛行機を教えてくれたのは誰だっけ。安城殿かな。
桜くんのお墓の前で1人で飛ばしてたなぁ。…あの時、本当に私は一人ぼっちなだなって思って……。
でも、寂しいって気持ちも良くわからなかったっけ。
………そんな時に無一郎くんと出会ったから、実は嬉しかったのかもしれないな。
(ひとりは嫌だな)
ふとそう思うと、無性に寂しくなった。
「そろそろ帰ります。」
「そうか。気をつけてな。」
悲鳴嶼先輩はまだ子供達を見守るようだ。三人はこちらに目も暮れずにああだこうだと紙飛行機を飛ばしている。
ご機嫌取り…と言ってしまえばそうだが、とりあえずおはぎを買って帰った。
あと買い物に行くと言って出てきたのでスーパーで食材を買い込んだ。…それにしても買いすぎた。普通に重い。
最近買い物サボってたから冷蔵庫の中空っぽだったしちょうどいいや。今日のご飯は何がいいかな。って悩んだところで、私は上手に料理できないけど。
…まあ、ご飯まずくても今日はおはぎがあるしいいでしょ。
ちょっと仕事もしたい。手をつけていないのが一個ある。どういう構図にしようかな。そういえば、布団干してないな。そろそろゴミ出し…。
なんてことを考えているうちにすぐ部屋の前に着いた。両手が塞がる中、ドアを開けて転がり込むように玄関に入った。
『修行か?』
「そうかもしれない…」
ゼエハア息をする私におはぎが言った言葉はなかなか的を得ていた。
私はしばらく玄関で休もうと思ったが、奥から大きな足音が聞こえてきて慌てて背筋を伸ばした。