第77章 世界一の辛さ
ていうかなんで実弥って言ってないのにわかったんだろう。…そんなに私ってわかりやすいのかな?
「それなら謝りたくない事情を話せばいいだろう。」
「いやですよ。話したくないんです。」
「ハハッ。隠し事か。」
先輩はまた笑った。
「どうして話したくないかは話したのか?」
「…言った…は言いました」
「そうか」
まあ実弥には怒られたけど。
「一緒に暮らしててもプライバシーってあるじゃないですか。私は話したくないことまであけっぴろげにしたくないです。」
「その話はしたのか?」
「…してませんけど。」
「その話はした方がいいんじゃないのか」
「………」
私はムッと頬を膨らませた。
「その調子だとまた逃げそうだな。」
「いや、逃げませんけど…ゴニョゴニョ」
先輩は核心をついてきた。うう、改めて言われるとキツい。
「それよりも、私はお前がまだ不死川を他人ということに驚いている。」
「…だって他人だし。」
「不死川が聞いたら泣くぞ。」
「はあ…やっぱり私が他人と一緒になるって無理な話だったんでしょうか。」
ついに弱気になってそんなことを言ってしまった。
悲鳴嶼先輩は否定しない。
「なら、どうしてお前は時透を引き取って寝食を共にしていたんだ?」
少し強い口調でそう言われ、ハッとする。
無一郎くんとはずっと一緒だった。でも、何か衝突したとかもない。いやそれはあの子がまだ小さかったから…。
「無理なんてことはないだろう。」
「…だって実弥と無一郎くん違うし」
ぽつりと呟くと、先輩は困ったように笑った。…この人もよく笑うようになった。ことあるごとに泣いていたのにな。
「まあそう自分を追い詰めることもないだろう。気楽に考えてみるといい。」
「…絶対適当ですよね。」
「半分本気だ。」
半分適当なんじゃん。
…この人こう言うところあるよなぁ。でも気楽に、か。
………あまり真面目に考え過ぎるのも良くないか。