第77章 世界一の辛さ
阿国は私から紙飛行機を受け取り、にこりと笑った。
「ごめんね、紙飛行機の飛ばしっこしてたら公園の外に飛んでいっちゃったの。阿国の紙飛行機が一番だね!」
阿国の指差す先には広いグラウンドがある公園があった。…そういえば、ここって学園の近くだっけ。
「風が吹いたからだよ。僕が一番だった。」
「いや、お前ら場外だからアウト。俺の勝ち。」
…青春しているみたいで何より。
あれ、でもこの子達学校は?????
「お前たち、あまり外ではしゃがないように…」
その時思わぬ人物と遭遇した。
「…悲鳴嶼先輩……」
ヌッと現れた巨体の男性は、いつもみたいに涙を流していた。
「何やってるんですか?????」
素直にそんな言葉が出た時には、もう子供たちは公園へと走って戻っていた。
先輩はそんな子供たちを見てため息をつく。
無一郎くんに誘われて私も公園に。飛行機を三回ほど投げたところで休みたくなったので東屋のベンチに腰掛ける。悲鳴嶼先輩はそこから子供達を眺めていた。
「先生っていうのも大変ですね。生徒が遊んでいるのも見守るんですか?」
「いや、まあ、そうだな…。」
先輩は言葉を濁した。
「本当は授業中なんだが、霞守は授業を受けることが難しいんだ。それでたまに散歩をする。そうすると少し落ち着くようなんだ。」
「…そうですか。」
そういえば、霞守兄妹はあまり学校に行ってないって聞いたな。……陽明くんは最近会ってない。元気だろうか。
「時透兄弟は、勝手についてきた」
先輩が困ったように言うので思わず吹き出した。
「子供たちにもいろんな事情があるからな。…どうにかしてやることは難しい。それでも笑っているのを見るとホッとするよ。」
三人は大人のことなど知らずに笑っている。このあと時透兄弟は怒られるのだろうか?阿国は無理に教室に連れて行かれるのか?
………嬉しいことの代わりに嫌なことがある。
楽しい時間ほど、続かない。