第77章 世界一の辛さ
面会の後、警察署の外に出た。
「一件落着ですかね。」
見送りに出てきてくれた春風さんはにこりと笑ってそう言った。いや、この人がほとんど今回のことは動いていたと思う…
「そうだね。」
「……終わった気がしないです」
「まあ、すぐにそうとはなりませんよね。これからです。」
春風さんはそう言った。
「じゃあ、後のことはこちらで。」
「はい、お願いします」
私と童男は頭を下げてその場から去った。
2人きりになった瞬間、少しだけ気まづさを感じたけど童男は優しく話しかけてくれた。
「色々巻き込んでしまってごめんね。」
「…いえ、私は……」
「…どこかでこうした方がいいとは思っていながら、俺もなかなか行動に出られなかったんだ。
あいつが警察に捕まえられた時、那由多がそんなことするわけないって思って…俺は那由多を信じたかったのか否定したかったのかどっちだったんだろうな。那由多は自分が家族から離れることを望んでいたのにさ。
結局は俺が引き止めてしまっていたのかもしれない。それでここまでこじれたのかもしれないね。」
そう言う童男は悲しそうだった。
そばにいただけいろんな苦労があるだろう。
一緒にいるって本当に簡単じゃない。
「でもは不思議だね。事件の真ん中に飛び込んだと思ったら、もう解決しちゃった。心が強いんだね。」
童男は微笑む。
「きっと良いママになるね。」
その言葉にタジタジになってしまう。そんなこと初めて言われたし、さらっとそなんこと言えるのすごいと思う。
「わ、私はただ、…すごいへなちょこで弱いし……いつも立ち向かうことしかできないから、突っ込むだけ突っ込んでいって1人じゃ何もできないしすごくいろんな人に甘えちゃいます。」
「……」
「私だけじゃないです。童男さんも。」
そう言うと、彼はにこりと笑った。
「立ち向かうのはすごいことだし、甘えるのは生きる者の特権であって弱い証明じゃないよ。」
「……そう、ですか?」
「それが君らしさ。だからいいんだよ。」
童男はそう言った。
…私らしさ、か。
その言葉が、ちょっとだけ嬉しかった気がする。